うつ病で人生を失った僕が変われた理由|心を動かした“たった一言”の叱責
20代後半、僕の人生は完全に止まっていました。
うつ病を患い、毎日薬に頼りながら、ただ時間が過ぎるのをぼんやりと見ているだけ。
やる気も希望もなく、何もかもがどうでもよくなっていたんです。
アルバイトが決まっても、出勤できずにクビ。
人との約束も守れず、見た目も清潔感ゼロ。
そんな自分に対して、反省するどころか、「全部、親のせいだ」「職場が悪い」「病気だから仕方ない」と、責任を他人に押しつけていました。
今思えば、あの頃の僕は、現実から逃げることに必死だったんだと思います。
自分を正当化しないと生きていけないくらい、心が弱っていた。
でも、そんな僕にたった一言で目を覚まさせてくれた人がいました。
それは、かつて大学時代にアルバイトをしていた居酒屋の経営者。
再会した彼からの“本気の叱責”が、僕の心を動かし、人生を少しずつ変えていくきっかけになったのです。
この記事では、僕がどん底のうつ状態から抜け出し、少しずつ人生を立て直していった実体験をもとに、「変われた理由」と「心を動かされた言葉」についてお話しします。
もし今、「変わりたいのに変われない」と悩んでいる方がいたら、少しでもヒントになれば嬉しいです。
第1章|薬に頼りきりだった僕の、崩れた日常
うつ病と診断されたのは、20代後半の頃でした。
それからの僕の生活は、“薬に頼るだけ”の毎日。
心療内科でもらった薬を飲みながら、意識がぼんやりとした状態で過ごす日々。
気力も集中力もなく、ただ時間だけが無意味に流れていきました。
バイトに受かっても、すぐに出勤できなくなり、1ヶ月も経たずに解雇される。
そんなことの繰り返し。
生活リズムは乱れ、外見に気を遣う余裕もなく、寝ぐせのまま外出したり、くたびれた服を着たまま出勤することもありました。
人と話すのも億劫で、誰かと関わるのが怖い。
けれど心のどこかでは「このままじゃいけない」と思っていた――
でも、変わる理由も、変われる自信も見つからなかったのです。
当時の僕は、すべてを誰かのせいにしていました。
「親が厳しかったからこうなった」
「職場が理解してくれなかったからダメになった」
「うつ病だから働けないのは仕方ない」
そんなふうに、“他責思考”で自分を守り続けていたんです。
でも、それが原因で人間関係は崩れ、信頼も失い、孤独だけが残っていきました。
そんな僕に、思いがけない再会が訪れます。
大学時代にアルバイトをしていた、あの居酒屋の経営者。
彼との再会が、僕の人生を少しずつ変えていく転機になったのです。
第2章|「また来いよ」と言ってくれた人がいた
人生に絶望していた頃、ふと思い出したのが、大学時代に半年ほど働いていた小さな居酒屋でした。
そこには、厳しくも温かく、どこか人情味のある経営者がいました。
何気ない気持ちでその店に顔を出したとき、僕の想像を超える言葉が返ってきたんです。
「今しんどいのは分かってる。でも、それでもいいから、うちでまた働いてみないか?」
当時の僕は、複数のアルバイトをクビになった直後で、まともに働ける自信なんてまるでありませんでした。
それでも、その経営者は僕を信じて「また来いよ」と声をかけてくれた。
正直、驚きました。
そして、少しだけ心が救われたような気がしたのを覚えています。
最初のうちは、ちゃんと出勤していました。
少しずつ社会との接点を取り戻していく感覚がありました。
でも、日が経つにつれてまた同じ問題が顔を出します。
「今日は無理かもしれない…」と気持ちが沈んでしまい、寝坊したり、他のスタッフに代わってもらったり。
また、以前のように欠勤が増えていったんです。
「やっぱり自分はダメなんだ」
そんな思考に支配され始めたある日、経営者から「飯でも食いに行くか」と誘われました。
きっと、ただの食事ではないことは、すぐに察しました。
そして、その夜の会話が、僕の人生を大きく変えることになります。
第3章|「お前は自分に甘えてる」――人生を動かした一言
食事の席で、経営者は静かに、でもまっすぐ僕の目を見て、こう言いました。
「お前さ、自分に甘えてるだけじゃないのか?」
心の奥にズシンと響く言葉でした。
でもその瞬間、僕の中には反発の気持ちが生まれました。
「いや、俺は病気なんだよ」
「しんどいのは本当なんだ」
「甘えてなんかいない」――
けれど、次に彼が言った言葉が、そんな言い訳をすべて打ち砕きました。
「俺は体調がどれだけ悪くても、ケガしてても、店を休んだことは一度もない。
約束した以上は、来てくれるお客さんにちゃんと向き合わなきゃいけないからな。」
思い返せば、彼はいつもそうでした。
熱があっても、声が枯れていても、厨房に立ち、接客し、笑顔で店を守っていた。
「誰かに迷惑をかけたくない」「約束を守ることが信用につながる」――
その姿勢は、口だけじゃなく行動で示されていたんです。
「しんどいのはわかる。でも、お前は“しんどいこと”を理由に、自分に甘くしてる。
そのままだと、何も変わらないぞ。」
叱られているのに、なぜか温かかった。
厳しいけれど、その言葉の裏には「お前なら変われる」という信頼が込められているのを感じました。
そのとき、初めて心の奥から「変わらなきゃ」と思ったんです。
誰かに責められて変わったんじゃない。
誰かに本気で信じられたから、変わりたくなったんです。
それから僕は、自分の中で小さな覚悟を決めました。
「まずは一度もサボらず出勤しよう」と。
たったそれだけの目標。
でも、僕にとっては人生を取り戻すための、大きな一歩でした。
第4章|当たり前を積み重ねて、信頼が戻ってきた
経営者からの叱責を受けた翌日から、僕はまず「サボらないこと」を自分に課しました。
欠勤ゼロ、遅刻ゼロ。
出勤前には必ずシャワーを浴び、髪を整え、服も清潔なものを選ぶようにしました。
そんなの当たり前だろ、と思う人もいるかもしれません。
でも、当時の僕にとっては、その「当たり前」ができていなかった。
だからこそ、ひとつひとつの行動が、自分を変える実感につながっていったんです。
すると、不思議と周囲の反応も変わり始めました。
挨拶をしてもそっけなかった人が笑顔で返してくれるようになったり、
「今日も頑張ってるね」と声をかけてもらえるようになったり。
ああ、信頼ってこうやって取り戻すんだ――
僕は、居酒屋の現場で生き方を学び直していたように思います。
経営者はそんな僕に、さらに多くのことを教えてくれました。
- 身だしなみを整えることの大切さ
- 相手の立場を考えた言葉遣いや態度
- 信頼は一気に得られるものではなく、小さな積み重ねの先にあるもの
どれも学校では教わらなかったこと。
でも、社会で生きていく上で何より大切なことでした。
居酒屋での日々は、僕にとって「再生の場所」でした。
だからこそ、本当は辞めたくなかったんです。
でも、38歳になったある日、ふと強烈な不安に襲われました。
「このままで、本当にいいのか?」
「正社員として働かずに、いつまでこのまま続けられるのか?」
居心地のいい場所に甘え続けていては、もう一歩先には進めない――
そう思い、僕は居酒屋を離れる決断をしました。
胸が張り裂けるほど寂しかったけれど、成長するためには必要な選択だったと、今でも思っています。
第5章|間違いに気づけたとき、人はようやく変われる
居酒屋での経験を通じて、もう一つ大きな学びがありました。
それは、「人は、自分の間違いに気づいたときにしか、本当の意味で変われない」ということです。
世の中には、約束を破る人、遅刻を繰り返す人、人を裏切るような行動を平気でする人がいます。
でも、その多くは“自分が間違っている”という自覚がないまま生きているのです。
僕もかつてはそうでした。
「うつ病だから仕方ない」
「今日は体調が悪かったから連絡できなかった」
「そもそも相手が悪い」――
そんなふうに、自分を正当化する理由ばかりを探していました。
でも、それって結果的に誰かに迷惑をかけ、信頼を失っていたという事実から目を背けていただけだったんですよね。
たとえ体調が悪くても、たとえ事情があっても、
「迷惑をかけている」という事実は変わらない。
それを「仕方ない」で済ませてしまう限り、人との関係は築けません。
人間関係にトラブルが起きたとき、相手のせいにするのは簡単です。
でも、ほんの少しだけでいいから、「自分にも悪かったところはなかったか?」と考えてみてほしいんです。
その視点が持てるようになると、自分の行動や言動が変わり始めます。
相手を責める前に、自分の改善点を探せるようになると、不思議と周囲との関係も少しずつ良くなっていきます。
僕自身、変わることができたのは、経営者の叱責で“間違いに気づけたから”でした。
誰かのせいにしていたら、今も変われていなかったと思います。
まとめ|変わりたいなら、「気づき」から始めよう
僕がうつ病から立ち直り、人生を少しずつ取り戻せたのは、
ある経営者からのたった一言の叱責がきっかけでした。
「お前は、自分に甘えてる」
その言葉は、過去の自分を否定されたようで苦しかった。
でも同時に、「お前は変われる」と信じてくれているようにも聞こえました。
そこから僕は、小さなことから始めました。
遅刻しない、欠勤しない、身だしなみを整える、挨拶をする。
当たり前のことを3ヶ月だけ、真剣に続けてみたんです。
3ヶ月が半年に、半年が1年に。
やがてそれは“習慣”となり、意識しなくてもできるようになっていきました。
もし今、あなたが「変わりたいけど、どうしたらいいか分からない」と悩んでいるなら、
まずは自分の中にある“気づいていない間違い”に目を向けてみてください。
他人のせいにしていたこと、自分を正当化していたこと、
ほんの少しだけでいいから、自分にも原因があったかもと振り返ってみてほしい。
そして、小さな改善をひとつだけ始めてみるんです。
それを3ヶ月続けること。それがきっと、人生を動かす一歩になるはずです。
僕は、そうやって少しずつ変わることができました。
だからきっと、あなたにもできると信じています。